就労継続支援B型とは

就労継続支援B型とは、障がい者総合支援法に基づいた就労系障がい福祉サービスの一つです。

障がい者総合支援法とは、障がい者の支援を定めた法律で、「障がい者の日常及び社会生活を総合的に支援するための法律」が正式名称となります。
従来の障がい者自立支援法の内容や問題点を改善するためにできた法律で、障がい者自立支援法を改正した形で2013年4月より施行されています。

この法律では、さまざまな福祉サービスを障がいや難病がある方の個人個人のニーズに合わせて組み合わせて利用できる仕組みが定められています。
障がいや難病がある人に対して80項目に及ぶ内容の調査を行い、その人に必要な「障がい支援区分」と呼ばれるサービスの度合いを認定して、それに応じた福祉サービスを利用できるようになっています。

この法律は2013年4月に施行後、一度改正されており、2018年4月から最初の改正法が施行されています。

この障がい者総合支援法には、六つの基本理念があり、その六つとは、

  • 障がいの有無にかかわらず、すべての国民が基本的人権を持つ個人として尊厳を尊重されること
  • すべての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しあいながら共生する社会を実現すること
  • 全ての障がい者及び障がい児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活または社会生活を営むための支援を受けられること
  • 社会参加の機会が確保されること
  • どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生する事を妨げられないこと
  • 障がい者及び障がい児にとって日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における物事、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することです。
障がい者総合支援法より

このような理念を基に作られた就労継続支援B型のサービスは、障がいや重病を持つ人のうち、体力や年齢などの理由により一般企業や就労継続支援A型の事業所で雇用契約を結んで働くことが困難な人が、自分の体調や体力に合わせて働くための場を提供する福祉サービスです。
この就労継続支援B型のサービスを受ける期間の定めはありませんが、一般就労に必要な知識や能力が高まった人に対しては、一般の企業への就労に移行するための支援も行っています。あらたでは令和元年度に1名の一般就労の実績があります。

職員の人員も、管理者、サービス管理責任者と、職業指導員、生活支援員を利用者の人数に応じて一定の割合で配置することも必要です。

就労継続支援B型の大きな特徴の一つは、「雇用契約を結ばずに働く」ということです。雇用契約を結ばずに働くので、そこで働く人は時給などの「賃金」ではなく、作業の成果により「工賃」を受け取る形で収入を得ることになります。

就労継続支援B型事業所は全国に9,176ヶ所あり、その利用者数は193,508人となっています。(平成27年2月現在の国保連データより)

就労継続支援B型の対象者

就労継続支援B型の福祉サービスを受けることができる人は、以下のいずれかの条件に当てはまる必要があります。

  1. 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
  2. 50歳に達している者または障がい基礎年金一級受給者
  3. 1及び2に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に関わる課題等の把握が行われている者

この三点から分かるように、就労継続支援B型の福祉サービスを受けるためには必ずしも障がい者手帳を持っている必要はありません。
また、利用者の年齢の上限もないため、高齢者であっても利用が可能です。
しかし、就労経験がある、または就労移行支援事業所を利用したときに就労に関する課題などが把握されている必要があります。
なので、原則、特別支援学校などを卒業後すぐに就労継続支援B型事業所で働くことはできません。

就労継続支援B型の福祉サービスを受けるためには、以上の条件を満たしている必要があるので、お住いの市区町村の福祉窓口に相談してみることがいいでしょう。

就労継続支援B型の仕事内容

就労継続支援B型事業所では、基本的に軽作業を中心とした仕事を行います。
例を挙げると、農作業、木工加工、部品の加工、製品に刺繍をするなどの手工芸、パンやクッキーなどのお菓子作り、飲食店での調理、衣類やリネンなどのクリーニング、WEBサイトの作成などがあります。
※あらたでは木工加工を中心に施設外就労、軽作業を中心に様々な請負作業があります。

このような作業内容は、就労継続支援B型事業所ごとに異なります。

就労継続支援B型の平均工賃

H30年に厚生労働省が行った調査によると、その一か月の平均工賃は16,118円となっており、前年度の15,603円を上回る金額となっています。
就労継続支援B型事業所の工賃は出来高制であるため、時給に換算すると各都道府県が定める平均賃金を下回る事業所がほとんどです。
なおかつ、長時間労働や毎日の出勤が体力などの問題で不可能な利用者が多いこともあるため、このような低額になっています。
ですが、あらたでは平成30年度の平均工賃実績は20,479円 となっておりさらなる工賃向上に努めています。

全国平均(平成30年度実績)あらた(平成30年度実績)
平均工賃月額16,118円20,479円

現在では就労継続支援B型事業所が利用者に支払う工賃の平均が3,000円を下回ってはいけないという決まりがあります。

就労継続支援B型事業所で働いて得られる工賃は決して高額ではありませんが、就労継続支援A型事業所や一般企業へのステップアップを目指すための訓練や、障がい者や難病を持つ人などの社会参加という意味合いもあるため、工賃が低額であっても利用する人が多いのが現状です。

※1 出典:厚生労働省 平成30年度工賃(賃金)の実績について
≫平成30年度平均工賃(賃金)の実績について

就労継続支援B型の利用方法・利用料金

利用したいと思える就労継続支援B型事業所が見つかったら、見学や相談に応じてもらうことができる事業所もあるため、一度コンタクトを取り可能であれば見学することがおすすめです。
そうすることで実際の作業内容や、就労継続支援B型事業所の雰囲気などを知ることができます。
それから、その就労継続支援B型事業所を利用するかどうかを決めたほうが、長く利用し続けることができる可能性が高くなります。

利用を希望する就労継続支援B型事業所が決まったら、市区町村の福祉窓口にサービスの利用申請を行います。
利用申請を行うと、市区町村の担当者からサービスの利用についてのヒアリング調査があり、サービス支給認定のための会議を経て正式に就労継続支援B型事業所の利用が決まります。
就労継続支援B型のサービスを利用するにあたっては、「サービス等利用計画書」という書類の作成が必要になります。指定の特定計画相談事業所に書類の作成を依頼することになります。

サービス利用の認可がおりると、「障害福祉サービス利用受給者証」が発行され、その受給者証を持参して就労継続支援B型事業所で利用のための契約手続きを行い、通所の開始となります。

就労継続支援B型作業所の利用者は、あくまで「福祉サービスの利用者」という位置付けになるため、事業所に通う日数と世帯の収入により利用料金が発生することがあります。
生活保護受給世帯や、市区町村民税非課税世帯の人は利用料金は必要ありません。

市区町村民税非課税世帯とは、三人家族障がい者基礎年金一級受給者の場合、世帯年収が概ね300万円以下の世帯が対象になります。

市区町村民税課税世帯のうち概ね年収600万円以下の世帯の人は一か月に9,300円、市区町村民税課税世帯のうち概ね年収600万円以下の世帯の人であっても、20歳以上のクループホームや入所施設利用者の人や、市区町村民税課税世帯のうち概ね年収600万円以上の世帯の人は、37,200円を上限とする利用料金が必要です。

就労継続支援B型のメリット・デメリット

就労継続支援B型のサービスを受けながら事業所で働くことのメリットは、自分の体調や体力に合わせたペースで働くことができるという点です。
事業所によっては一日一時間や、週に一日だけの利用が可能な場合もあるため、短時間であっても生産活動に携わりたい人や、社会参加を行いたい人にも利用が向いています。
また、以前に一般企業で働いた経験があっても現在は働いておらず、将来もう一度一般企業での就労や、就労継続支援A型事業所での雇用型勤務を希望している場合に、そのための訓練やリズム作りも兼ねて就労継続支援B型事業所を利用することも可能です。

就労継続支援B型事業所の利用には、利用期間や利用者の年齢制限がない点もメリットといえます。

デメリットは工賃の安さです。就労継続支援B型事業所で得ることができる工賃の平均額は16,118円 (※あらたの平成30年度の平均工賃実績は20,479円 )となっており、決して高額であるとは言えません。しかし、体調や能力の向上により利用時間を増やしたり、作業効率を挙げることによりこれ以上の工賃を得ることも不可能ではありません。
また、工賃も各事業所や作業内容によって異なるので、そのような作業内容などの違いによってはさらに高額の工賃を得ることができる可能性もあります。